2006年04月14日 イタリア情勢

イタリア総選挙:欧州委員会のプローディ前委員長が首相に、ベルルスコーニ氏は退陣へ

ロマーノ・プローディ
© European Community, 2006
「連合」のロマーノ・プローディ氏。元イタリア首相。前欧州委員会委員長。

中央ヨーロッパ時間9・10日に行われたイタリアの議会選挙では、欧州委員会のプローディ前委員長が率いる中道左派連合が僅差で勝利し、プローディ前委員長がイタリア首相に返り咲く見込みとなった。

イタリアの議会は衆議院(Camera dei deputati、下院)と元老院(Senato、上院)の二院制となっており、今回の総選挙では、衆議院630議席、元老院315議席が改選された。なお、元老院には、ジュリオ・アンドレオッティ(Giulio Andreotti)元首相、ノーベル賞学者リタ・レヴィ=モンタルチーニ(Rita Levi-Montalcini)、エミリオ・コロンボ(Emilio Colombo)元首相、ジョルジオ・ナポリターノ(Giorgio Napolitano)元衆議院議長、実業家セルジオ・ピニンファリーナ(Sergio Pininfarina)、フランチェスコ・コッシガ(Francesco Cossiga)元大統領、オルカル・ルイージ・スカルファロ(Oscar Luigi Scalfaro)元大統領の7名の終身議員(senatore a vita)がおり、文字通り任期は終身で改選されない。

イタリアでは小党が乱立しているが、今回の選挙戦は、ベルルスコーニ現首相率いる中道右派連合「自由の家(Casa delle Libertà)」と、プローディ前委員長率いる中道左派連合「連合(Union)」の二手に分かれて戦われた。

シルヴィオ・ベルルスコーニ
© European Community, 2006
シルヴィオ・ベルルスコーニ首相。イタリアのメディアを牛耳る大実業家。一代で成功した。暴言癖があり、今回の選挙でもベルルスコーニ節は炸裂した。

「自由の家」は、ベルルスコーニ首相の政党である「フォルツァ・イタリア(Forza Italia)」のほか、右派の国民同盟(Alleanza Nazionale), 北部独立派の北部連盟(Lega Nord)、キリスト教民主主義のUDC(Unione dei Democratici Cristiani e Democratici di Centro、キリスト教民主主義者・中央民主主義者連合)などの政党により構成される。

また、「連合」は、オリーヴ連合(Federazione dell'Ulivo)、欧州翼賛民主主義者連合(Unione Democratici per l'Europa)、自由主義の「価値あるイタリア(Italia dei Valori)」、左派系の「拳の中の薔薇(Rosa nel Pugno)」、緑の連合(Federazione dei Verdi)、共産主義再興党(PRC = Partito della Rifondazione Comunista)、共産党(Partito dei Comunisti Italiani)などの政党により構成される。

投票率は83.6パーセントで、有権者の関心の高さを窺わせた。また、在外投票が可能となった初めての議会選挙でもあった。

選管による暫定結果によれば、衆議院においては、「連合」が約49.81パーセントで、過半数の348議席を確保し、「自由の家」は、約49.74パーセントで281議席となる見込みだ(なお、いずれにも属さない「南米イタリア人連合」も1議席を獲得した)。得票数が僅差であるにもかかわらず、議席数が大幅に開いているのは、昨年12月に改正された選挙法が、多数派が340議席に満たない場合には、340議席を超えるように追加議席を配分するとしているためである(配分の仕方は複雑であり、ここでは割愛する)。

また、元老院については、「連合」が158議席、「自由の家」が156議席となる見込みであり、「連合」が衆議院・元老院の両院を制する見込みだ。

イタリアにおいては、衆議院と元老院の立場は対等とされている(つまり、衆議院の優越はない)ため、両院の多数派が異なると、政局運営がきわめて困難になる。当初、「連合」が元老院でも多数派を形成できるかは微妙と見られていたため、政局の混乱が予想された。しかし、「連合」が元老院でも多数派を形成することとなったため、プローディ政権の成立は確実となった。

今回の選挙は、2000年の合衆国大統領選挙を髣髴とさせるような接戦で、選挙後の混乱も若干似ているところがある。ベルルスコーニ首相は、選挙後、不正選挙の可能性を示唆しつつ、疑問票の数え直しを要求した。当初、疑問票は8万票とされていたため、2万4000票余りの僅差の勝負が逆転する可能性もあった。

ところが、イタリア内務省が中央ヨーロッパ時間14日に発表したところによれば、疑問票は2131票に過ぎないとされた。これにより、ベルルスコーニ首相が逆転する可能性はなくなり、プローディ元委員長の勝利が確実となった(しかし、ベルルスコーニ首相は、100万票以上とされる無効票の数え直しを希望しているとされる)。

ロマーノ・プローディ氏は、イタリア首相、欧州委員会委員長を歴任した政治家で、経済学者でもある。詳しい経歴は、用語集の「ロマーノ・プローディ」を参照。